スイス編 2 (5月26〜28日)

登山列車のなかで知り合ったアメリカ人と、グリンデルワルトのユースに向かったが、かなりの坂を上るので、私は疲れて、彼に先に行ってもらい、しばらく野草の咲き乱れる道ばたで休むことにした。そのとき学校帰りの子供に出会い、写真を撮った。(前ページうっかり彼らの写真)の住所を聞き漏らし、いまだに写真を送ることが出来ないでいる。もう結構な大人になっていることだろう。

汗を拭きながら、目的のユースに着いた。噂に違わず、今までに泊まったユースの中では、最高のところだった。グリンデルワルトの町を挟んで、目の前には有名なアイガー北壁が眼前に迫っていた。ログハウスのテラスには大きな望遠鏡がおいてあった。

  

2日間の宿泊を申し込んだが、天候が悪く、ユングフラウヨッホに行くことが出来るかどうか心配であったが、その心配とは別に、ユースの原点はここにありというような、健康的な印象を受けた。

ユースではどこも食事は、すべてセルフサービスであったが、ここの食事は手の掛かった、料理だった。建物が木造のため、靴を履いている人は、裸足にならなければいけなかった。私は日本から、持参した、雪駄を許しをえてはいていたが、靴下でうろつく外人の姿は滑稽な気がした。

夜は、ロビーで誰かがピアノを弾いたり、ギターを弾いて輪になって歌を歌ったり、ユースホステル協会の人が見れば涙を流して喜びそうな、きわめて健康的なユースであった。そのかわり規則が厳しく、煙草厳禁。喫煙はテラスに限られていた。  

                         

  

同室になったイギリス人は、私が日本を発つとき、ちょうどエリザベス女王と入れ違いになったことを話したら、そんなこと知らないよ、という返事だった。ただ、リバプールから来たということで多少ビートルズに関して会話が出来た。イギリスに来ないかといわれたが、あいにく予定が無いので残念ながら断った。(余談ながら、昔は格別なファンというほどのものではなかったが、今にして思えば、在京中に来日した、ビートルズの公演を見ることができなかったのを残念に思う。チケットは、たぶん6000円で、入手可能であった。唯一シリアルナンバー入りの、アップル社のホワイトアルバムを持っているのが、自慢であるが、番号は普通で、おまけに息子が小さい頃に、帯を破られてしまっている。  

                                        

  

翌朝は、快晴だった、前日は雲に覆われていた、アイガーの頂上も真っ青な空をバックにそびえていた。グリンデルワルトの駅から、もう一段高い場所にある、クライネシャディックまで登山電車で行き、そこからさらにアイガーの中をくりぬいたトンネルを通る、別なケーブルカーに乗り換え、最終点、ユングフラウヨッホまで行った。これにはユーレールパスは通用せず、往復約1万円ほどかかるが、朝の1番、2番の電車は早朝割引があり、それでも67SF(スイスフラン、1SF=100サンチーム約100円)と高いのだが、ここまで来たのだから、と思い切って行くことにした。日本人の観光ルートの目玉にもなっているコースである。車内アナウンスも、日本語のテープが流れていた。

途中何回か止まり、岸壁にくりぬかれた穴から、グリンデルワルトの町を見下ろすことが出来た。上は想像以上に寒かった。ありったけの衣類を着込んでいたが、それでも寒さはセーターを通してしみこんできた。壁に書かれた日本語の落書きの多さにあきれてしまった。  

          

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その夜も、同じユースに泊まったが、心は次の国スペインに飛んでいた。物価が安く、暖かい国旅の途中に聞いたスペインの魅力は、南に向かうにつれ、私の心の中で日毎に膨らんでいた。

  翌日、ジュネーヴから出る国際列車に乗るために、グリンデルワルトを後にした。ジュネーブでは列車の時間まで暇をつぶすため、ユースを訪れた。だいたいどこのユースでも日本人の一人や二人はいる。その前に昼間、公園で時間をつぶし、ホットドッグを食べていると、チェコから帰るという、中年の日本人夫婦に話しかけられた。人形劇の国際大会に出ていたという二人は気さくに話しかけてきたが、旅先で出会った日本人には二つのタイプがあった。全く無視する人と、話しかけて来る人。こちらは、少しでも情報を得るために旅行者と思われる人には、積極的に話しかけるようにしていた。夕方ユースに行くと、案の定一人日本人がいて、マドリッドの中心地の安い宿を教えてもらい、コーヒーまでご馳走になった。袖振れ合うも他生の縁、というところであろうか。

 ジュネーブに着いたばかりの時、駅で荷物を預け、さてどうしようかと思案しているとき、若い毛皮のコートをきた美人に話しかけられたことがあった。ここは各国の中継点になっているのでやばいところと聞いていたので、私はとっさに身構え、詐欺の被害者にならないように気を付けた。

彼女の話では昔父が在日米軍の兵隊で、母は日本人だという。アメリカにいて今からパリに帰るところだが、懐かしくて声をかけたという。私は話半分で聞き流し、適当にあしらった。本当に事実なら申し訳ないが。一人旅の、馬鹿面下げた日本人が身につけた自己防衛であった。一緒にビールか食事でも、と誘われ、鼻の下を伸ばしてのこのこ着いていき、ビール一杯100ドル請求されたと言うたぐいの話は、嫌と言うほど聞かされていた。イタリヤで被害にあったという

被害にあった日本人から直接聞いたこともあったので。その手の話には十分警戒していた。どこかの片田舎であれば、別だが、ここは国際都市ジュネーブである。「ああそう」で、私は相手にしなかった。もし、彼女の話が本当なら申し訳ないが、一人旅の鉄則。

知らない人間には気を付けろ。 である。

   

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